2つの色の差(ずれ)を「色差」といいます。この差が少ないほど2つの色の区別はしにくくなります。
印刷の現場では、この「色差」をいかに減らすかが重要です。なぜなら、少しの色の差がイメージを大きく変えてしまうことがあるからです。
例えば、カタログに載っている洋服の色が実際と全く違っていたら、購入者からクレームや返品が発生して企業にとって大きな損失が生じてしまう可能性があります。
そうした事態を防ぐため、慎重に色を合わせていく必要があるのです。
色の違いはわかりにくい
色空間の中で、図のように楕円の範囲に囲まれた色は目視では色の判別が難しいとされます。この範囲は色味や明度、彩度によって変わります。鮮やかな色ほど差が分かりにくい傾向がありますが、逆に、無彩色(グレー)は少しの差でも認識されやすいため、目視で正確に色の差を判断するのは極めて難しいことです。
※図はかなり簡略化したイメージです。詳しくは「マクアダムの楕円」で検索してみてください。
目視でほとんどの人が知覚できない差であれば、一般的には「同じ色」と判断されますが、印刷や製造の現場では微妙な色のズレが事故やクレームにつながることもあります。
また、色の感じ方には個人差があるだけでなく、同じ人でも環境や体調によって変化するものですが、判断にブレがあると品質保持ができません。
そのため、正確な色差を出せるよう、測色計などの機械で測った色の詳細な数値を用いて計算します。
色差の計算式と許容範囲
色差は表色系によって計算式が違いますが、ICCプロファイルで用いられる「CIELab」では色差を「Δ(デルタ)E」で表します。2つの色の座標値をもとに、明るさの差(ΔL :縦軸)と色の差(Δa*=緑〜赤方向、Δb*=青〜黄方向 :横軸)から色差ΔEを求めます。
色差の程度によって、許容範囲かどうかを判断します。
業界や企業ごとの基準、製品の規格等によって基準値や許容範囲は異なりますが、印刷の現場ではおおむね、ΔE=0.2〜0.4であればプロが判別できる限界レベル、ΔE=0.4〜0.8が品質管理における一般的な許容値、ΔE=3.0以上で「色が違う」とクレームが出るレベル、と言われます。
※表はJIS規格による色の許容値を参考に作成